ホルスト「惑星」に「ボイジャー」楽章を加え世界初演　７月、作曲は清水研作

ホルスト「惑星」に「ボイジャー」楽章を加え世界初演　７月、作曲は清水研作 – 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20240504-ITL5HREQHFKNZFPXH3LQ7QAVXY/

2024/5/4 10:00

　イギリスの作曲家、グスターブ・ホルストの組曲「惑星」に、惑星探査機ボイジャーにちなむ「ボイジャー」楽章が加えられ、７月に世界初演される。ホルストは「火星」「木星」など７楽章を作ったが、新潟大教授の清水研作が８楽章目として「ボイジャー」を作曲した。的川泰宣・宇宙航空研究開発機構（ＪＡＸＡ）名誉教授は「この曲はボイジャーが飛んでいる時代の私たちの心を写してくれるものではないか」と話している。今年はホルストの生誕１５０年。このほど「ボイジャー」公開プレゼンテーションが行われた。

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太陽圏脱出の物語

「惑星」は１９１８年に初演された。「火星、戦争をもたらす者」「金星、平和をもたらす者」「水星、翼のある使者」「木星、快楽をもたらす者」「土星、老いをもたらす者」「天王星、魔術師」「海王星、神秘主義者」の７楽章。大管弦楽の大曲のため全曲が演奏されることは少なく、「木星」の旋律はイギリスの愛国歌になっている。「惑星」は占星術に影響を受けている。

「ボイジャー」公開プレゼンテーションから。（手前左から）作曲家の清水研作、渡部潤一・自然科学研究機構国立天文台上席教授、的川泰宣ＪＡＸＡ名誉教授、ソプラノの秋元悠希＝４月１５日、東京都墨田区のすみだトリフォニーホール （江原和雄撮影）

「ボイジャー」を作曲した清水は、米ニューイングランド音楽院で学び、ハーバード大学大学院で博士号を取得した。１９９０年、ビエニアフスキ国際作曲コンクールで優勝。新潟大教授を務める。

　清水は「何といってもボイジャーは、４７年の年月を探索しているわけです。時間という概念をここにもってこないとおかしいと思いました。時間の経過を響きの世界で具現化していく作業が作曲の全貌です。この音楽は太陽圏脱出の物語なのではないか、と思っています。ボイジャーを擬人化させようと決意しました。静止画でなく動画的な流れで、寂しさとか辛さとか、そういうものを含めて擬人化させたボイジャーが飛んでいるというのがイメージです」と話す。

　約１５分の楽章には「さらば地球よ」という歌が入る。実際は英語で、日本語訳は「さらば太陽系、さらば地球よ、われら再びテラの地を踏むことはない」と、ソプラノで歌われる。

「さらば地球よ、でちょっと感傷的になっています。ボイジャーとしては寂しいわけです。ただ、二度と地球に戻ることはないだろう、という意志を表現するためには現実的な響きを作らなければならない。ゴールデンレコードの曲なども登場するのですが、そのままでは面白くないのでデフォルメします。聴いてみるとあの曲だなと分かる。過ぎ去った過去みたいなものを表現しながら、進んでいきます」と話した。

「組曲『惑星』～ボイジャー楽章付き＜世界初演＞～愛し地球よ、さらば！ボイジャー宇宙航海の旅へ～」公演は７月７日、すみだトリフォニーホール（東京・錦糸町）。的川名誉教授らのトークセッションもある。シズオ・Ｚ・クワハラ指揮新日本フィル。秋本悠希（ソプラノ）。問い合わせ：トリフォニーホールチケットセンター（略）。

（江原和雄）

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