韓国の進歩派はなぜ強いのか･･･“李在明有力”だけではない、大統領選を深く知るための12の質問

投票日まで残すところ二日となった韓国大統領選。世論調査では最大野党・共に民主党の李在明（イ・ジェミョン、60）前代表の大幅リードが伝えられる中、選挙や韓国社会の見方を専門家と共に改めて整理した。

今回、話を聞いたのはジャーナリストの千貫栗（チョン・グァンニュル、44）さん。韓国トップの週刊誌『時事IN(シサイン)』で15年にわたって政治記者として韓国政治をウォッチし続ける一方、19年には単著『20代男性』を上梓するなど、若者世代にも詳しい。

5月25日の対面インタビューと6月1日の書面の追加インタビューをまとめた。（記事は敬称略）。

（1）韓国の選挙は構図（選挙を規定する枠組み）・人物・政策の順で重要であるといわれます。最終盤に差し掛かった選挙戦の総評をお願いします
一般的に韓国の選挙は薄氷の勝負と予測されることが多いですが、今回の場合は、大統領選が『12.3戒厳（訳注：昨年12月3日の尹錫悦による非常戒厳）』からきているため、基本的な構図として、共に民主党（以下、民主党）が勝利する可能性が高いまま出発した選挙といえます。

世論調査によって数値にばらつきがありますが、中道・無党派といった政治的性向を持つ人たちは共に民主党に投票するという意志を一貫して見せています。中道層が保守候補に投票しづらい選挙でした。

選挙戦の過程で大小のイシューがありましたが、上記のような枠組みが揺れたことはありませんでした。それくらい（非常戒厳から大統領罷免を経た選挙という）構図が圧倒的な選挙でした。

（2）韓国では選挙を控え、連日いくつもの世論調査結果が報道されます。多すぎるような気もしますが

韓国政治で世論調査が必要以上に重要に扱われている部分があります。

世論調査が今のように重要視されるようになったきっかけは、02年の大統領選の予備選で、盧武鉉（ノ・ムヒョン）と鄭夢準（チョン・モンジュン）の一本化をジャッジする手段となったことにあります。その後、世界のどの国にもない政治文化のひとつとなりました。

世論調査が重要になる中で、政治に関心が高い層が鍛えられていきました。こうした層が答える調査は品質が下がる傾向がありますが、大統領選を控えてさらに顕著になります。データ会社の問題というよりも、世論調査に過度の意味を与える社会の中で、回答者の意識化が進んでいるということです。

また、ミョン・テギュン（訳注：尹錫悦夫妻に取り入り政治的利益を得たとされるいわゆる政治ブローカー。尹錫悦夫妻の不正をあばくカギを握る人物といわれる）のように、世論調査の結果をもって政治に影響を与えようとする組織があり、そうした調査は納得しがたい数値を作り出しています。

（3）千貫栗さんは尹錫悦の弾劾から前倒しの大統領選に至る過程で「韓国社会が極右を最小化させるべき」と何度も訴えていました。それはうまくいっていると思いますか
今回の大統領選のテーマは「戒厳以降、韓国の民主主義を回復する」というものです。韓国社会に「『12.3戒厳』のような民主主義を破壊する企図が二度とあってはならない」という合意を作ることが大事でした。

そのためには「憲政体制を否定する勢力」が最小化されなければなりません。戒厳を擁護する極右勢力の支援を受けている国民の力の金文洙（キム・ムンス）候補の得票が少なくなるべきということです。

しかしこれはうまくいっていないと見ています。李在明が「中道保守」とみずからを位置付けたことは適切だったと思いますが、民主党が大法院（最高裁）に強い態度を見せたこと（※）などが影響しています。

※5月1日、公選法違反に問われている李在明氏に対し、韓国大法院が有罪趣旨での高裁への差し戻し判決を行った。これに対し、判決に至るまでの異例のスピードを理由に「大法院の選挙介入だ」という声が民主党内から上がり、大法院長（最高裁長官）を弾劾しようとする動きがあった。現在これは一旦停止した状態にある。

以下全文はソース先で

徐台教

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長　6/1(日) 16:39
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2c5bd8acf3e7263946323cea9ae67e65a1be3345